躁鬱や自律神経に関わるさまざまな心の病には似たような症状が現れることもあり、はたして躁鬱なのか自律神経のバランスが崩れているだけなのか自己判断は難しいものです。
イメージとしては自律神経失調症の方が軽い疾患であり、躁鬱はかなり深刻な疾患としてとらえられていることでしょう。ところが自律神経失調症の陰に大きな病気が隠れていることもあり、安易に考えてしまっては危険です。自律神経失調症が悪化したことで躁鬱になることもあります。
躁鬱と自律神経失調症にはよく似た点がたくさんあります。自律神経のバランスが崩れると倦怠感や不安感、イライラや憂鬱、気持ちの起伏が激しくなることもあり、躁鬱の症状と似た点が多く見受けられます。また食欲がなくなったり、頭痛やめまいが起こることもあるでしょう。

心の病の症状の現れ方は患者さん一人一人に違いがあり、程度によっても躁鬱を疑いたくなる場合もあると思います。逆に躁鬱の特徴である感情の浮き沈みなどは、自律神経が影響する多くの疾患にも現れる症状とも言えるでしょう。更年期障害や不定愁訴なども自律神経のバランスの乱れが関わっているでしょうし、ストレスや睡眠不足が原因でイライラしたり、何も食べる気がしなくなるのも自律神経が乱れてコントロールできなくなっているからでしょう。
そこで、心の変調や身体の異変が心配になった時は、ぜひ心療内科を受診して、ご自身がどんな状態なのかを知っていただくことも必要だと思います。自律神経のバランスが崩れて体温調節がうまくいかなかったり、胃腸の働きが悪くなる程度で済むこともあるでしょうが、まれにその症状が悪化した頃には躁鬱と診断される場合もあります。そして、もっと早く受診しておけばよかったと思うはずです。
身体の痛みは、もしかしたら癌ではないかとか、死ぬのではないかと大げさに考えてしまうものですが、心の病はただ疲れているだけとか、自分は躁鬱になるはずがないといった具合に、逆に軽く考えたくなるものです。もし、躁鬱や自律神経失調症などの心配があるのであれば、こばやしクリニックにご相談ください。
躁鬱と自律神経の基本的な関係
自律神経とは
自律神経は、私たちの意思ではコントロールできない身体の働きを調整する神経です。
・交感神経:活動モード(興奮・緊張・行動)
・副交感神経:休息モード(リラックス・睡眠・回復)
この2つがバランスよく働くことで、心身は安定します。
躁状態のとき:交感神経の過剰亢進
躁状態のときは、体も心も「常にアクセル全開」のような状態です。
このとき交感神経が過剰に優位になります。
【典型的な症状】
・心拍数・血圧の上昇
・睡眠時間が減る、眠れなくても平気
・落ち着かず、活動量が増える
・イライラ・攻撃的・早口・多弁
・集中力が上がるが、持続せず暴走気味
つまり、身体的にも精神的にも「戦闘モード」が続いています。
鬱状態のとき:副交感神経の過剰優位
一方、鬱状態では体と心が「ブレーキしか効かない」状態になり、
副交感神経が過剰に優位になります。
【典型的な症状】
・強い倦怠感、動く気力が出ない
・眠気・過眠・食欲低下
・体温低下・低血圧
・消化不良や便秘
・思考が鈍り、何をしても楽しめない
つまり、体も心も「省エネモード」に入りすぎている状態です。
躁鬱=自律神経の極端な揺れ
双極性障害では、この交感神経と副交感神経のバランスが極端に揺れるのが特徴です。
・躁:交感神経が過剰に働く
・鬱:副交感神経が過剰に働く
この「振れ幅の大きさ」が、心身の不安定さを生み出します。
つまりこう言えます
「躁鬱病は、脳の神経伝達物質の異常であると同時に、
自律神経のバランス異常としても現れる。」
脳と自律神経は密接に連動しています。
セロトニン・ノルアドレナリン・ドーパミンなどの神経伝達物質は、
情緒だけでなく自律神経の働きにも深く関わっています。
改善・安定のためのアプローチ例
医学的治療
・薬物療法(気分安定薬、抗精神病薬 など)
・精神療法(認知行動療法、生活リズム療法)
自律神経を整える生活習慣
・睡眠と起床のリズムを一定にする
・朝日を浴びる(セロトニン活性)
・深呼吸やストレッチで副交感神経を促す
・カフェイン・アルコールの摂取を控える
・適度な運動(ウォーキングやヨガなど)










