躁鬱病の患者さんの中には、躁鬱病と診断される以前にアスペルガーという診断を受けていたケースもあるでしょう。
アスペルガーは幼児期から発症することも多いわけですが、もちろんその頃は本人にアスペルガーの自覚があるわけではなく、どこかほかの子供と違うと周りの人たちが思い始めることがきっかけとなり、心療内科などを受診してアスペルガーだとわかることになります。
ただ、その時点で躁鬱病を疑うことは少ないでしょうし、当然躁鬱病を発症していることは稀なことかもしれません。
アスペルガーの主な症状は、人とのコミュニケーションがうまく取れないことです。自分の思っていることを伝えるのも苦手で、相手の立場を思いやったり、人の考えを理解するのも苦手のようです。
そして、たとえアスペルガーだったとしても、幼い頃は自分の世界に閉じこもることで難を逃れていれば、周囲との衝突も避けることができたのかもしれませんが、成長するにしたがってそうもいかなくなります。

おそらく次第に自分が周囲の人間とは違うことに気付き始め、自分に向ける周囲の目が違うことを恐れるようになり、アスペルガーの人たちにとっては人間関係や社会の環境が大きな負担となり、その結果として躁鬱病を発症してしまうことも多いのではないでしょうか。
真面目な人ほど物事を真剣にとらえてストレスをためやすいとも言われていますが、そのために躁鬱病をはじめとする心の病を発症しやすい傾向にあるようです。
ただでさえ社会に出て周りの環境になじめないとか、仕事上の悩みが原因となって躁鬱病を発症する人が増えていると言われていますが、アスペルガーの人にとっては一層生きにくい環境に思えてしまい、躁鬱病のような二次障害を発症することが多いようです。
幼児期のアスペルガーへの対応が青年期の躁鬱病の発症に関わることもありますので、まずはアスペルガーを疑うことがあれば心療内科を受診していただければと思います。
そして、川西市周辺で躁鬱病やアスペルガーに対応できる病院をお探しであれば、阪急川西能勢口駅からすぐの、こころと不眠の診療所こばやしクリニックにご相談下さい。
躁鬱病とアスペルガーの違い
躁うつ病(双極性障害)
特徴
・気分の波が大きい病気。
・躁状態(ハイテンション、多弁、多動、浪費、不眠など)と、うつ状態(気分の落ち込み、意欲低下、無価値感など)を繰り返す。
・気分は「エピソード的」に変化する(数日〜数か月続く)。
・発症年齢:思春期〜30歳前後に多い。
原因
・脳内の神経伝達物質のバランス異常、遺伝的要因、生活リズムの乱れ、ストレスなどが関与。
主な治療
・気分安定薬や抗精神病薬などの薬物療法が中心。
・生活リズムの安定、心理社会的支援も重要。
アスペルガー症候群(ASDの一型)
特徴
・先天的な発達特性。
・社会的コミュニケーションの困難(相手の気持ちを察しにくい、暗黙のルールが理解しにくい)。
・興味・行動の偏り(強いこだわり、同じパターンを好む)。
・感覚の過敏や鈍麻(音・光・触覚などに強く反応)。
・気分の波は大きくなく、生まれつき持っている特徴が一貫して続く。
原因
・脳の発達過程の特性、遺伝的要因。
・「病気」ではなく「神経発達の特性」とされる。
主な支援
・薬物療法は基本的に補助的(不安・うつの二次症状への対応)。
・環境調整(静かな空間、わかりやすい指示)、コミュニケーション支援、ソーシャルスキルトレーニングなど。
違いを簡単にまとめると
項目 | 躁うつ病(双極性障害) | アスペルガー症候群(ASD) |
本質 | 気分障害(波が大きい) | 発達特性(生まれ持った脳の傾向) |
気分の変動 | 躁と鬱のエピソードを繰り返す | 気分は比較的安定している |
発症 | 思春期〜青年期に発症することが多い | 幼少期から特徴が見られる |
主症状 | 感情の極端な波(ハイ⇔落ち込み) | コミュニケーションの困難、こだわり |
治療 | 薬物療法+生活リズム調整 | 環境調整+心理・教育的支援 |
経過 | 波を繰り返す | 生涯にわたる特性として続く |
つまり・・・
・気分の波で苦しんでいるなら → 躁うつ病の可能性
・対人関係のズレやこだわりが強いなら → アスペルガー(ASD)の可能性
が考えられます。
ただし、両方を併発する人(ASDを基盤に気分障害が出るケース)もいますので、正確な診断は専門医による評価が必要です。